東京高等裁判所 昭和33年(う)827号 判決
被告人 秋元宣太郎
〔抄 録〕
所論にかんがみ原判決を査閲するに、原判示事実は、被告人において河合保が土地を買い受けたいと希望しているのを奇貨とし、土地売買代金名下に金員を騙取しようと企て、栗原武右衛門所有の判示土地につき同人より売却及び代金受領につき何等の権限の委任がないのにかかわらず右の委任を受けており代金は三六万円で全額揃わなければ取り敢えず手付として七万円出してくれれば、あとは昭和二六年六月までの月賦払いでもよい旨虚構の事実を申し向け右河合保をしてその旨誤信させ、よつて判示二五年一二月三〇日頃前記土地に関する架空の売買契約を締結させその代金支払名下に同日頃から同二六年一二月三一日に至る間前後一二回にわたり同人方において、判示のように合計三六万円を交付させてこれを騙取したというのであるから右は犯意、欺罔行為及び被害法益も単一であり、たとえ分割代金受領期間が約一年にわたりその回数が一二回であつたとしても、右分割代金受領の度毎に新らたな欺罔行為が施されたものでない本件においては、右一二回にわたる行為は詐欺の包括一罪と認むるを相当とする。しかるに原判決は右の事実につき一二個の欺詐罪が成立するものとし併合罪の法条を適用し刑の加重をしているのであるが右は法令の適用を誤つたもので、その誤は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから論旨は理由がある。
(大塚 本田 渡辺辰)